『ジャイアニズムな私』


『お前ってジャイアンみたい』

 ……って好きな人に言われたらどうよ?悲しい通り越して、虚しい。女の子に『ジャイア ンみたい』は禁句でしょ!?しかも私のどの辺がジャイアンみたいなのよっ!!体型?口調? 性格?・・・どれにしたってショックだ。好きな人の自分に対しての印象は大切なコトだ。気 にならないと言ったら嘘になる。だけど・・・ジャイアンは酷いでしょ。

「・・・じゃいあん?」
「そう、ジャイアン」

 私は確かめるように、彼に問うた。私の聞き違いだったコトを密かに祈りつつ、彼に問うた。 しかし彼が紡いだ言葉は、私を絶望させるものに変わりはなかった。

「私の……どの辺がジャイアンなのさ」
「どの辺って……全部じゃん?」

 ……『全部じゃん?』って……疑問系にすんなよっ!?私に聞かれても困るっつぅの! !説明出来ないなら、初めから言うなっ!!この、万年寝太郎がっ!!沸々と沸き起こる怒り に肩を振るわせつつも、私はもう一度彼に聞くことにした。

「もう一度聞く。私の何処がジャイアンみたいなの?」

 なるべく鋭い口調で言った。冷やかで、刃物のような鋭さ。

「うーん……敢えて言うなら……傲慢さ?」

 彼は可愛らしく首を傾げて言った。だけど、彼がその動作をしたところで全然、全く、可愛く くない。萌えない。寧ろキモイ。っていうか、逝ってしまえ。

「ふーん。傲慢さ、ねぇ?」
「そうそう。“俺の物は俺の物。お前の物は俺の物。”って思考。正に、お前の為に在るよう な名言じゃねぇか!!」

 くすり、と私は笑った。ええ、今までしたコトも無い、花の様な笑顔。そんな私に(恐らく) 不意を突かれた彼は、一瞬固まった。私はその、彼の一瞬を見逃さない。笑顔のまま で、彼の腹に蹴りを入れてやった。彼は『ぐはっ』という血を吐きそうなまでの呻きをあげ、 腹を押さえてしゃがみ込んだ。

「痛っ。何すンだよっ!」
「何するんだぁ?はっ、聞いて哂っちゃうわね。ガラスの様に脆い乙女ハートを、傷付けた罪 は重いのよっ」
「はぁ?」
「ふん。そんなに私がジャイアンみたいって言うなら、お望み通りにしてあげますよ。私の物 は、勿論私の物。アンタの物も、勿論私の物・・・そういうコトね?」

 私がこの言葉を言った瞬間、見る見るうちに彼の顔は青褪めていった。私はなぁんにも悪く ない。だって言い出しっぺは彼なんだもの。私は唯、彼の思う私を再現しただけ。そうよね? ほんの唯の仕返しよ。私がジャイアンみたいだなんて言った罰。精々苦しみなさいな。

「じゃあ手始めに、アンタの大事なゲームソフト。私に下さいな」

 彼の目の前に手を出し、微笑む。嗚呼、楽しいカモ。本当に私は、彼の言う通りジャイアン みたいだ。私の知らなかった一面が見れた感じで嬉しいかも?彼は青い顔を益々青くさせ、仕 舞いには冷や汗もかき始めた。どんどん顔色が悪くなっていく。なんか可哀想にも思えて来た。
 だから、私の望みを叶えてくれたら、今回は許してやることにしよう。

「そうねぇ……。ひとつだけ……私の望みを叶えてくれたら、アンタの大事なゲームソフ トは諦めてあげるわ」
「・・・マジ?」
「マジ。大マジ」
「・・・よし。良いぜ、何だよ?」

 彼の言葉に私はクスリと笑って。
























「私の想い、気付いて下さいな」